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February 26, 2005

二重スパイ

目下の僕の課題。それは、Ciscoの資格取得だ。難儀している。

ネットワーク技術者の人には言うずもがなのことなのだけど、シスコシステムズはインターネットを構成する通信機器であるルーターの製造メーカー。しかもルーターで世界的に圧倒的なシェアを誇るメーカーなのだ〜!
本社はもちろん、米国である。

インターネット上で送受信される電子メールや、閲覧されるWebサイトなど。インターネットを流れるありとあらゆる情報は、このルーターと呼ばれる通信機器が伝送を担っている。
あなたが会社や家庭からインターネットに接続しているとしたら、あなたの会社のネットワークの基幹部分、あるいはプロバイダーのネットワークオペレーションセンターの内部にルーターは設置されている。
そして、そこにあるのは十中八九、シスコシステムズ製のルーターだ。

最終消費者に届く製品を作っていないから一般にはあまり知られていない。だけど、シスコシステムズという会社は、インターネットの世界におけるトヨタやNTTドコモなどのようなナンバーワン企業なんである。

そんなわけでネットワークエンジニアは、このシスコシステムズの製品を扱うことが多い。他社製品のことを全く知らなくても、Ciscoルーターを知っていれば一人前とみなされるほどだ。
ルーターといってもコンピューターの一種だから、動作させるためにはプログラムが必要になる。それを僕らの業界ではコンフィグレーション、あるいは日本語で“設定”と呼んでいるのだけど、Ciscoルーターの設定を行えることは必須なのだ。

いま、僕が取り組んでいるのは、Ciscoルーターの設定に関する資格なのだ。
それを取得することは、一人前のネットワークエンジニアであることの証しである。

これが他の業界だったら、その業界の技術の習熟度をはかる資格は公的な団体が認定するのだろう。でも歴史が浅く競争の激しいIT業界では一般に、特定メーカーの特定製品の技術を習得することが技術力の証しとされる。
例えばルーターのシスコシステムズだけではなく、OSやオフィスアプリケーションであればマイクロソフト、データベースであればオラクルと、それぞれナンバーワン企業がはっきりしているわけだ。だから各分野の技術者はそのナンバーワン企業の製品についての勉強をし、その会社にお金を払って資格試験を受験する。

これは非常に巧妙な戦略である。
ナンバーワン企業の製品の製品をまずマスターしないとその業界でやっていけない。そこでみんなが勉強して資格を取得する。その結果、必然的に他社の製品の勉強をする機会はなくなる。業界では他社製品についての知識をもつ人が少なくなるので、ナンバーワン企業はそのシェアを安定して維持することができる。

さらにシスコシステムズは狡猾である。たんに技術者を教育して囲い込むだけではない。シスコは製品を直接ユーザー企業に販売するのではなく、販売代理店(パートナー)を介して販売する形をとっている。そしてパートナーには、この資格を取得した技術者が何名いるかという数によってランク付けし、製品の卸価格を決める。

こうなると、個々のエンジニアの技術力の証しとしてだけではなく、会社としても社員に資格を取得させることが至上命題になるわけだ。なにせCiscoルーターのシェアは圧倒的だから、Cisco認定資格者の数がその会社の競争力を左右してしまう。

巧妙でしょう? ルーターを作る会社は国産(NEC、日立、富士通など)も含めていくつもあるのだけど、シスコシステムズの圧倒的なシェアは揺るがない。
“巧妙”というとネガティブな響きもあるのだけど、純粋に商売として見れば、こういうビジネスモデルを作り上げた人にはただただ頭が下がるばかり。

そして僕の勤務先も、ユーザー企業のネットワークを作り上げるという仕事をしており、このシスコシステムズのルーターを調達してきて販売する。できるだけ安く調達してくることが、受注確度や利益を左右することになるわけだ。
これまで、僕の仕事のポジションがあまり関係なかったのだけど、最近になってこのシスコシステムズ製品の調達、技術評価の部隊に組み込まれてしまった。

説明が長くなった。けど、そのようなわけでネットワーク業界に生きながら資格取得というものとは無縁に生きてきたこの僕も(なにせ持っている資格は第一種普通免許と博物館学芸員(!)と、そしてネットワーク関連では唯一、.comMaster★★)、それでは済まなくなったのである。
僕は、シスコシステムズのルーターについて学習し、関連する同社の資格を4つばかり取得しなければならない。その期限は、3月末—。

やれやれ。

言い訳させてください。
実は僕はネットワークエンジニアといっても、いささか特殊な経歴の持ち主なんだよね。なにせこれまで、インターネットの通信を担う根幹の機器であるルーターの設定に携わったことがないのである。
これまでは専ら無線LANという通信機器に携わってきた。最近では一般家庭のなかで普通に使われるようになってきた無線LANだけど、でも実のところ企業通信のなかではそんなにメジャーな機器ではない。
しかし一貫して関わって来たこともあってそれなりの知識は身につき、昨年は専門書も出版した。

そんな僕にとってルーターは初めて。もちろん、TCP/IPの知識や、RIPの動作くらいは研修で受講する機会がなんどもあったきた。だからそのあたりはだいたい想像がつくのだけど、OSPFとかEIGRPなどのルーティングプロトコルになるとさっぱり。アクセスリストは概念をわかっても、コマンドレベルに落とせない。

シスコシステムズのルーターに関する資格のうち、最も基本的で入門レベルに位置づけられる資格がCCNA(Cisco Certified Network Associate)だ。
僕はこのCCNAに、もう2回も落ちてしまった。
危うし! 危うし! 危うし!

それにしても、無線LANについては専門書を執筆し、社内ではスキルプロフェッショナルの認定も受けた身でありながら、よりによってCCNAに苦戦しているとは……。これは何がなんでもナイショにしておかなければいけない。正直言って、立場がないというものである。

ということで、このブログを読んだみなさんも、口外しないようにお願いします!!
(ちなみに受検の代金ですが、上述のようなビジネス上の理由があるので会社持ちです。その代わり、嫌でもパスするまでは受けなければなりません)。

そんな休日。本当はCiscoのテキストを開いて勉強しないといけないんだけど、なかなか取りかかれない。
部屋にいると、ついついドラクエ8に興じてしまったり(なにせこれも週末にしかやっていないからなかなか進まないのだ)、あるいはマンガや雑誌を読んでしまったり、なんとなくテレビを見てしまったりする。
こういう習性は、学生時代の試験勉強と何ら変わらないよなー。無理強いされることにモチベーションが全くわかず、義務感で自分を律することができず、集中力も維持できないというのは、いまも全く変わらない。

ということでなんとなくHDDレコーダーのメニューを操作したりしていて、録り溜めた番組のリストから選んで見始めたのが、タイトルの通り二重スパイ。
シュリやJSAに連なる、朝鮮半島の南北分断をテーマにした韓国映画であった。だいぶ前、WOWOWで放映されたものだ。もともとこういうポリティカルフィクションは嫌いではないので、録画はしておいて、でもなんとなくまとまった時間がなくて鑑賞はせずにいたのであった。

鑑賞したら、番組をレコーダーから速攻削除。
HDD搭載DVDレコーダーなる文明の利器を購入したのは、本格的なブームになる直前くらいだった。だからディスク容量は限られていて、最新機種に比べると録り溜めておける時間は短い。適度に見終えてさくさく削除しないと、後々予約録画した番組の時に、ディスクの容量不足で録画が番組途中で尻切れになるという悲劇に見舞われる。
永久保存しておきたいような本命の番組の時にそんな目に遭うと、かぁなりガックリする。このガックリ度は、ファミコンのドラクエIIIにおいて冒険の書が消えてしまった時のあの落胆をはるかに上回るだろう。

そんなふうに二重スパイは僕のレコーダーのハードディスクから駆除されたのである。
もしまた見たくなったら、DVDでレンタルしてくればいいんだよね。

そして、僕の貴重な土曜日も終わった。

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Comments

自己レスです。課せられた資格4つのうち、CSE、WLAN AM、WLAN FEはとったので、あとCCNAだけなんですが、また落ちました。3度目です。トホホ…。
ただ、WLAN AMとWLAN FEは何の準備もなく一発で通りました。Ciscoが買収する前からAironetをいじってた身で、かろうじて面目躍如ですわ。

Posted by: Yu1o | March 06, 2005 10:42 PM

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