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June 12, 2005

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

ちょっと前の話——。

ある催しのチケットがあったので、久々に初めての人を誘ってみることにトライした。でも、がっくーん。見事ことわられてしまった。
メールの返信に、優しい言葉が添えてあった。

「私よりも、きっと他にいい人がいますよ」

この一文を目にした瞬間、思った。
ああ、この言葉だよ…。このところ遠ざかっていたけど、また出くわしたなあ。

むかしはこんな言葉を添えられて、よくことわられていたっけ。
ある時、意を決してメールを書いたり、電話をかけて、デートに誘ってみる。その結果毎度のように言われて、僕をひどくがっかりさせてくれる言葉。その一つが、「他にいい人が…」だった。

そもそも、あなたと行きたくて誘っているわけだし。

それに僕の経験の限りでいうと、その言葉の通りに他の人を新たに誘えることなんて滅多にない。
いい人が次から次に見つかればそりゃいいんだけど、言葉の通りにならないことがさらに僕を落ち込ませる。ま、そんなことで落ち込むのもなんだけど、そんなものなんだよね。

「他にいい人がいますよ」。
だから一見、優しい表現を体裁としてとっているけれど、これは僕にとっては忌み嫌うべき返事ではあった。

かつてのことだ。

それはかつてのこと。
以前だったら気落ちしたはずなのに、こんどのことについて言うと、実はさほどでもなかった。
正直、さほどがっくりこなかったことに、自分自身も驚いた。
なぜだろう。同じようなことをもう何10回も繰り返して心にもう免疫ができてしまったのか、それともその相手に対して真剣度が足りなかったのか、よくわからないけど…。

たぶん両方だろうな。
年の功もあるし、かつてのように特定の相手に過度に真剣になってはいないというのもあるんだろうな。
なにより、だいたい三十路になってこんなことでウジウジ悩むなんて、自分でも情けない。体面ってものもあるし。

いわば、乾いているのだ。僕の心が干上がってしまっている。そんな感じなんだ。
本当は、もう少し心揺れて、落ち込んだりするほうが人間的なんじゃないか、という気はするけどね。わしはこんなんでいいのか?

いいのだ、たぶん。
僕が三十余年かけて積み上げたものは、それがポジティブなものであれネガティブなものであれ、僕は自分で否定することはできない。

これが自分なのだ。そう思うしかない。


ただ最近、こういうシチュエーションになると、頭の中をリフレインする歌詞があるんだよね。
こんな一節…。

♪なるべく 傷つけぬように 傷つかぬように
 切なさも ほらね 押し殺せる
 愛だと名付ければ それが愛だと言える

GARNET CROWというアーティストの、忘れ咲きって曲の詞だ。

ちょっとしんみりしてしまう歌。(♪こんな歌だ)。

garnetcrow僕は音楽といったらJ-POPしか聞かない人間で、しかも流行曲ならなんでもいい、という極めてポリシーのないリスナーを長年続けている。
そんななかでも、時々お気に入りのアーティストというものに出会うこともあるわけで、昨年の後半からはその一つにGARNET CROWが位置づけられている。

聞いたことのない人に音楽の印象を説明するのは、とても難しいことなのだけど、あえて挑んでみる。
明るく前向きな歌詞とか、アップテンポなメロディーとか、最近の僕には正直ついていくのがしんどくなりつつある。たまたま聞いたGARNET CROWの曲は、何かこう、陰影を感じさせるような響きに満ちていて、それでひかれてしまったのだ。

そして、昨年の木枯らし吹く季節に聞いたこの忘れ咲きは、当時の僕の心境に非常にフィットしていて、FMラジオで初めて耳にした時から虜になってしまった。
だって、「傷つけぬように傷つかぬように、切なさも押し殺せる。それが愛だと言える」…だもん。シラフで聞いても心にきゅうと来るよねえ。

この歌は、他に

愛だとか恋だなんて 変わりゆくものじゃなく
 ただ君を好き そんなふうにずっとね 思ってるような

とか

♪孤独や躊躇(とまど)い 弱気が押し寄せる夜に 忘れ咲いた
 思い出そっと 枯れゆくまで 今宵まだ 身をまかせて

など、僕にとっては、心をきゅううとさせる表現に満ちている。
過去の風景をしみじみ思い起こさせる出だし。やや暗めの曲調。そういったものがうまくブレンドされていて、耳にしたその時から深く僕のなかに刻み込まれたのであります。
(なぜか中国語のブログに、歌詞が掲載されています)。

心がきゅうう。

うぷ(…僕は、情緒的な文章を書こうとするとヘンになる。慣れていないんだな)。


さて、HDDレコーダーに録り貯めていた映画のなかから、GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(こうかくきどうたい)を見る。言わずもがなの押井守監督作品。

録画された日付を見ると、NHK BSで放映されていたのが2004年12月24日。ふーん、クリスマスイブか… (・ε・)

原作は士郎正宗による、とってもとってもマニアックな漫画(…正直、コマを追うのがとても疲れる、かなり読みにくい本だ)。
映画を見ると、驚くほどマトリックスを彷彿とされるんだけど、こっちの漫画のほうが先だから、どっちが真似たといえば答えはマトリックスってことになるのかな。

昨年公開されたイノセンスの、ストーリーとしては直接の前作にあたる。
いまのネット社会のはるか延長線上のお話で、人間がサイボーグとなることが日常の着衣のごとく当たり前になっちゃった未来。コンピュータやアンドロイドばかりか、生きた脳みそまでもがハッキングされ暴走しうる世界を描いている。
考えてみればこれ、原作はインターネットが普及する以前に描かれたわけだ。ここまで描き切っているのはまさに先見の明だねえ。オタク漫画たるゆえんだ。

ghostinshell-1しかし、脳みそにハッキング!! うーん、怖いですねえ。
でもだからといってこの映画は、未来社会の恐怖を描くようなありきたりなもんじゃない。
こういう舞台設定を自明のこととして、そんな未来に活躍する“少佐”こと草薙素子の姿を描く(これがまたサイボーグ女なのだ)。この主人公が属するのは公安だから、端的に言えばサイバー社会の警察漫画だね。

いったん携帯電話をもったら、サルだとか壊れているとか言われても手放せないのと同じように、この作中の世界では擬態化(サイボーグ化)は、切り捨てることのできない行為。もはや常習なのだ。

このお話の脇役に、脳みそをハッキングされて、ニセの記憶を埋め込まれてしまった清掃作業員が登場する。彼は実に気の毒だ。まるでいつぞやのフランソワ君並みにかわいそうなキャラだと、僕は思った。

ghostinshell-2離婚でもめている女房とかわいい娘がいると自慢げに話していたのに、それは全て疑似体験だった。何者かに利用されてニセの記憶を埋め込まれていたのだ。
奥さんも子供も、自分の頭のなかにだけ存在する家族だった、夢みたいなもんだと、刑事に宣告された時の男のふぬけた表情。
まさに茫然自失…。

「その夢、どうやったら消せるんです」
「残念ながら現在の技術では……お気の毒です」

ああ、こんな残酷な会話、久しぶりに見たねえ。
心にきゅううと迫ってくる。
(脳みそにファイアウォールをインストールしておかないとね)。

♪なるべく 傷つけぬように 傷つかぬように
 切なさも ほらね 押し殺せる

この未来社会で、切なさだけを抱え、それを押し殺すこともできずに、この作業員の男は生きていくんだね。

♪愛だと名付ければ それが愛だと言える

でも、そんな仮想現実も、名付けてしまえば愛だと言える。のかもしれな。い。。、. .  .     .


……。

…………。

書いていて気づいた……。
これはまさに電波男が唱える世界なのだ。

“企業のネットが星を被い電子や光が駆け巡っても、国家や民族が消えてなくならないほど情報化されていない近未来”を待たずとも、この2005年に仮想現実に生きることを主張した先駆的な書がある。
それが、電波男

dempaotoko

この筆者には、脳内妻や脳内妹がいるという。
電波男においてそれは強制されたものではなく、筆者自体が積極的に選び取った生き方なのだ。
そう、いまトレンドは脳内恋愛…。

脳内に生きよう。

きゅうう。

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