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July 16, 2005

電車男

「あれって実話なんですかね」

ランチの際、電車男映画を見たことを話題にすると、返されたのが上のセリフ。

「さあ、どうだろう。僕は…」
これまでも何度となく繰り返して来た会話なのだけど、いまだにお決まりのパターンのごとく訊ねられる。そして僕は自分の見解を口にする。

ふむ…。

denshaotokoということで、電車男


2ちゃんねるスレッドが全ての始まりとなったストーリー、「電車男」。
最近はTVドラマも始まって、わりと好評らしい。

そのTVドラマ版「電車男」第1回の放映の直後。7月の海の日の3連休の初日に、僕は映画館に足を運び、映画版「電車男」を鑑賞してきた。

TVドラマのなかではエルメスは伊東美咲で、電車男は伊藤淳史である。これが映画は、電車男を山田孝之、エルメスを中谷美紀が演じている。

TVドラマの第1回を見ていると、ドラマの冒頭にエルメスと電車男の出会いのきっかけとなるで電車のシーンに、山田孝之らしき人物が一瞬出てきた。
あまりに唐突だったので、それがいったい何を意味しているのかその時はわからなかった。

ところが、映画を観たところ、映画にも同様の映像が挿入されていた。
ラストのスタッフロールが終わった後におまけのようについてくるワンシーン。そこには伊藤淳史の電車男が登場する。
つまり、TVドラマの予告編をクリップしていたのだ。

映画に予めTVドラマの予告編が組み込まれる。
なるほど、製作にテレビ局が入っているわけだし、映画とTVドラマはセットで考えられていたのだろう。
商魂たくましさの一つの実例なのかもしれない。いや、メディアミックスというのか。


それにしても、たいした人の入りだった。

今回、映画館としてはTOHOシネマズ川崎に出かけた。
公開から既に何週間かたっているのに関わらず、劇場はほとんど満席に近い状態だった。

こういう光景を見ると、ついつい考えてしまう。

どういうことを考えるかというと、こんなことだ。

この電車男、ストーリーそのものが一つの奇跡みたいなもので十分に魅力的な物語だ。
だけど、こうなってくると別の側面として、人口に膾炙し消費の土台に載っていった過程のほうに不思議なものを感じてしまう。

つまり、2ちゃんねるのスレッドから始まって、一部のネットユーザーの間で盛り上がりを見せ、そこに一般メディアが着目し、漫画、映画、ドラマといった大衆も消費できる形式に次々と変換されていく。
その過程のことだ。

僕には、この過程そのものがたいしたものだよなあと感じられる。
それこそがあたかも一つの奇跡ではないだろうか。同時に、奇跡のようでありながら、何かネタがあればそれを貪欲に消費する高度資本主義社会の典型例のようでもある。
僕にはとても興味深い。

いまとなっては電車男の魅力は、この過程そのものにある。そう言っても過言ではない。
満席に近いシートを眺めて、そう思った。


さて。

「あれって実話なんですかね」。

僕の見解を記しておくと。
僕は、実話だと思いますね。多分に、本当にあったお話なのだろうと思う。

その理由は—。

書籍版の電車男を読めばわかるけど、このお話は、ラブストーリーとしてはいささか単調に過ぎるからだ。

おそらくフィクションであれば、もう少し山あり谷あり、という起伏をつけるだろう。

ところが実際には、これはきわめて順調に、ひたすら一直線に進んでいくストーリーになっている。
スレッドに集う“毒男”たちの反応—2ちゃんねる用語やAscii Artのオンパレードはきわめて面白いのだけど、それをのぞいて眺めるならば、まったく“谷”がない—電車男はエルメスを食事に誘って以後、いちども挫折していない。

つまりはたんなる幸運な男の物語なんである。

あまりに順調に事が進むので、僕は書籍を読んでいて拍子抜けしてしまった。
僕も日々、電車男並みの努力はしているつもりなのに、なぜ僕の人生にはエルメスたんが現れないのだ!?

答えは単純である。彼は幸運だった。
それだけだ。

この拍子抜けするほどの起伏のなさが、逆に信憑性を醸し出す。
だから僕は、これは実話なのだろうと思うのだ。

そして、この全く単調なストーリーをいったいどうやって映画やドラマにするのだろうと思った。

それを確かめたいという思いもあって、映画館に足を運んだわけだが。
結論をいえば、案の定そこは全く新しいエピソードを創作していたのである。

映画では、舞い上がっていた電車男がいったんくじける、という場面を作っているのだ。
その挫折から2ちゃんねらーの心温まる励ましで再び立ち直ると、電車男は全力でエルメスのもとに走る。
秋葉原の、周囲にネオンサインが煌めく交差点で二人は出会い、ハッピーエンドとなる。

ほう。

この創作のつけたしで、電車男は映画として成り立った。

もともと、オタクの恋愛というキワモノ性と、2ちゃんねらーたちの反応以外とくに面白さのなかったこの物語
それを恋愛ドラマとして一般に消費できるレベルにもっていくことは、やっぱり甘受しやすい形に翻訳することが不可欠だったのである。


“ああ、こういうふうに描くわけね”。
と、劇場でスクリーンを眺めながら、醒めた頭で僕は考えていたわけです。

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