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February 12, 2006

ミュンヘン

■我が家であぶられる漆黒の煮汁

1月にいちど催したのがけっこう楽しく、その記憶が僕の脳内をリフレインしていたのでまた鍋パーティーを企画した。2月11日、前回とは別のメンバーで、友人・知人、5人が僕の部屋に集まり、鍋を囲んだ。

1回しか使っていないにも関わらず土鍋がヒビ割れているなどのトラブルがあったのだけど、普通の鍋に変えてなんとかスタート。そして煮立って、器に盛ったらこんなものだった。


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漆黒の液体が、灰色に染まった白菜やしめじ、豚肉を浮かべてたゆたっている。なんとも食指をそそられる一品じゃありませんか。え、何か違う?

今回作ろうとしていたものは、ごま風味の豆乳鍋だったはず。それを選んだ深い理由はとくになくて、新聞の家庭欄に、たまたまレシピが掲載されていたことによる。

レシピには、必要な食材として豚肉、野菜、調味料などと並び「ねりごま(白)」とあった。自分史のなかでも料理という経験には関わって日の浅い僕。ねりごま〜、そんなものどこに売っているんだ? と思って近所のスーパーの棚を物色していると、見つけた。なんだ、普通にあるじゃんと、カゴのなかに入れた。

鍋を待ちわびる来客たちの前で、調理を進める。鍋のなかにねりごまにだしつゆ、それから水と酒を入れ、煮込む。続いて白菜、葱、しめじ、肉、豆乳を入れ、アクをとる。

その結果、できあったものが上の写真なんだけど…。

途中から、色合いがどうもおかしいと思っていた。レシピには白いスープに浮かぶおいしそうな鍋が写っているのに、目の前で湯立っているのは、それとは全く装いが異なる。こ、これは…灰汁を煮込んでいるようだ。

原因は、すぐに判明した。ねりごまだ。レシピにねりごま(白)と明記されていたのに、僕が買ったのはねりごま(黒)だったのだ。「えー」と軽く批判のまなざし。しかしスーパーの棚にはそれしか売っていなかったのだからしかたないよ。

この鍋は、その場で腹黒鍋と名付けた。なぜならその場に居合わせた(女性以外の)出席者が、その名にふさわしい面々だったからだ(まあ腹黒というより、腹太なんじゃないかという話もあるけど)。ちなみに色は妙でも味は普通、食感もおかしくない。舌に広がるのはごまと豆乳のシンフォニー。マイルドにしてヘルシィで、腹太な人にもたぶんおすすめできる一品である。


■ミュンヘンかルワンダか、それが問題だ。

ミュンヘンホテル・ルワンダどちらがいいかなあ」

その腹黒鍋の席で、同じ三十路独身男で同期の友人I君がつぶやいた。なんと、最近新たな出会いがあったのだという。僕をさしおいて…これは聞き捨てならん。さっそく僕をはじめ同席者から質問攻めに会う。「次に会うのはいつ?」 それが明日だと言うではないか。

男性的なアピールは全くないけれど、理系の男らしくまじめでマメで、いわゆる“いいやつ”のI君。そんな彼にも、再び春がめぐってくるのだろうか。もしかすると君にとってこれが人生最後かもしれない、がんばるのだ。

デートには彼女の希望で、映画を観に行くことになっているらしい。どちらかのタイトルを観たいと挙げられたようで、上の相談になるわけだ。「ミュンヘン」と「ホテル・ルワンダ」って。…もしかして、かなり硬派の彼女なのか? これは手強そうだ。

僕は本棚からさっそく2冊の本を取り出し、「ホテル・ルワンダを観に行くなら、これで予習していけ」と薦めた。もちろんその本は、「ジェノサイドの丘・ルワンダ虐殺の隠された真実」(上・下)である。そしてNEWSWEEK日本版のバックナンバーを探し、ルワンダ虐殺10年の記事のページも開く。

しかし、彼は同席した先輩女性のアドバイスに耳を傾けていた。「有頂天ホテルが面白いよ。カップルで観に行くならこっちのほうがええで」「そうですかぁ」。おい、社会派の彼女を攻略するんじゃないのか…? 「そういう性格ではないと思う。でも、たんに東京ウォーカーで2つの映画の記事を読んだみたい」。けっこう普通の人らしい。ふーん。じゃあどっちでもいいや。

その後は、やはりデートに行くならお台場だとか、早く本当のホテルに行けとか、映画よりプラネタリウムに行くべきだとか、日本科学未来館のが素晴らしいとか、そういう話題で盛り上がったのである。しかしデートできるって、つくづく羨ましい。出会って2回目…ただただ脳内に妄想を繰り広げ、ひたすら先の展開を期待して胸膨らむ頃ではありませんか。ああ、羨ましい。

I君のお台場デート、いったいどうなったのであろうか。まだ、報告を受けていない。


■シンプルなメッセージを奥ゆかしく

そんな僕も翌日、映画を観に行った。「どっちの映画がいいかなあ」と口に出そうにも会話の相手はいない。春の来たI君と違って、僕はひとり映画館に来ているのだった。今頃I君はお台場でウキウキして、これからあんなことやこんなことを…あぁ。いや、むなしいのでよそう。

僕がこの日迷った選択肢は、「B型の彼氏」か「ミュンヘン」だった。話題の「ホテル・ルワンダ」は先日観てしまっていたのだ(その時のブログ)。

実は映画館に着いた時点では決めていた。断然、「B型の彼氏」である。ポップでコメディタッチの韓流恋愛映画で、一人ウキウキするに限る。なにせ今週末くらいでもう公開が終わってしまうのだ。早く観なければ。

と決意していたのに。いざチケット売り場に並ぼうとしたところディスプレイの上映時間に、“満席”の印が。そんなあ。がっかり…。

しかたがないので、第2候補であった「ミュンヘン」をチョイスしたのである。ふぁあ。3時間の社会派大作映画、だらだらと眺めるか。


観終わって思った。これはきわめてシンプルな問題意識を、実際の事件に託して長時間の物語として作り上げた作品だなあ、と。

(ここから先はネタバレで書きますけど;)

ニューヨークの摩天楼を背景にした公園でのラストシーン。「御前の祖国に帰れ」と諭す、イスラエルの諜報機関モサドの上司。それまでパレスチナのテロリストたちを手にかけてきて、精神が破綻しそうになりつつも家庭に戻った主人公は答える。

「こんなことを続けていては、永遠に平和は訪れない」。

背景に写る国連本部のビルから、カメラは方角をずらし、9.11で崩れ去ったワールドトレードセンターの双子のビルを映し出す。そしてそのまま、エンディングのスタッフロールが重なる。この象徴的なシーンに、この映画のメッセージが凝縮されていると思った。たぶん、多くの人も同じだろう。


しかしこの主人公の俳優、優男ふうで一見、暗殺者を演じるとは思えないのだけど、この映画のなかでは妻子を愛し料理を振る舞いながら、しかし祖国には忠誠を誓って4人の仲間とテロリストたちを殺していくのである。この一見ミスマッチな配役は、物語に独特の立体感を醸していて、イイ!と思った。きっとそういうものなんだよね。

イスラエルでは和平推進勢力の再結集をはかったシャロン首相が脳梗塞に倒れ、一方パレスチナ自治区では過激派勢力であるハマスが選挙で躍進する。トリノでは、そんなことと関係なく冬季オリンピックが開幕する。映画の公開にあわせたかのような時事ネタがよくもタイミングよく集まったものだ。けっして、よいニュースではないのだけど。


B型の彼氏」を観てほどよく能天気な気分になるはずが、一転して重々しい世界の現実に思いを巡らせることになった、日曜日の午後であった。

次回こそは「B型の彼氏」を観よう。上映期間が終わってしまう前に。そう思いつつ、川崎のヨドバシカメラに寄ってうろうろした。時節柄、大型画面の薄型テレビに関心があったのだ。

しばしテレビ売り場を徘徊する。テレビを眺めていると画面に川嶋あいが出て歌っていた。なんだかかわいいお嬢さんだなあ、と思った。萌え…を感じる。そのままCDショップに向かい、新星堂で彼女がボーカルを務めるI WiSHCDを買って、電車に乗って帰宅した。


 


iPodで♪明日への扉なんて聴いて、胸がキュンとする…(´・3・`)

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