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February 01, 2006

オリバー・ツイスト

 
 (写真はSankei Web http://www.sankei.co.jp/news/060201/sha094.htm より引用)


「ただいま地震が起きましたため、列車を停車しております…」

車中にアナウンスが流れた。

この日はノー残業デーで、とくに飲み会の予定も入っていなかった。だから早く帰ることになるだろうと思っていた。しかし、午後からモスバーガーのハンバーガーが無性に食べたい気分に包まれ、そこで最寄りの店舗に立ち寄って晩飯にハンバーガーを食らっていたのだ。

満足して横浜方面の京浜東北線に乗って、帰途に着く。列車が停まってアナウンスが流れたのは蒲田を出たあたりの頃だ。電車に乗っていたので揺れには全く気づかなかったのだけど、大きかったのだろうか? ふぁあ、会社の近くでハンバーガーなど食わなきゃよかったな。


僕がかねてより願っていることの一つが、東京で大地震には遭いたくないということ。東京は危険がいっぱいのような気がするのだ。高層建築。ビルの密集した繁華街。多数の人が集まる施設。そして満員の通勤電車…。相当悲惨なことになりそうである。

こう言う人もいる。「東京でもどこでも、大地震に遭えば死ぬ時は死ぬし、助かる時は助かる」。もちろん大地震は東京であれ、どこであれ起こってほしくないできごとだろう。もちろんそうである。しかし僕がとくに問題にするのは、自分が致命的な事態に陥る確率である。

これが僕の地元なら、人の数といってもたかだか知れている。民家は点在して道も広いし、街といっても高い建物など全くない。東京にいる時に比べれば災害時に影響を及ぼす係数がかなり少ない気はする。

僕の地元である西三河地方も東海地震の想定地域になっているわけで、決して地震に関して安全な地方ではない。だけど東京で大地震を迎えるよりはマシだろう。だからつねづね、首都圏直下型地震が起こる前には東京の生活を離れたいものだと考えている。といって、日々の仕事があるからにわかに、というわけにはいかないのだけど。


最も避けたいことが、通勤電車のなかで地震に遭うことだ。満員の車両が脱線でもしたら、相当悲惨な事態に巻き込まれそうである。

そしてこの日、ついに電車のなかで地震に遭う事態に遭遇してしまった。しかし幸いに車中では全く揺れを感じない程度のものだった。電車の停車時間が長引くにつれ苛立ちを見せる乗客たちのなかで、僕はたいした地震ではなかったことを心の中で感謝していた。震度6や7だったら電車は軌道を維持することはできない。

それでも停車を続けているということは、もしかすると地上では、それなりに揺れたものだったのだろうか…。

「この電車は、次の川崎駅まで行って運転を停止します」

5分ほどたった頃アナウンスが流れて電車は動き出し、そして僕と乗客たちは川崎駅で降ろされた。


川崎駅で放り出されてしまったのが午後8時50分くらい。京浜東北線だけでなく、横浜方面に向かう全てのJRの路線がストップしている。京急が動いているか確かめてそれに乗ってもよかったのだけど、ちょうどレイトショーが始まる時間帯だったので、携帯で上映時間を調べて映画館に向かうことにした。2、3時間潰している間に、JRもきっと運行を再開するだろう。

チケットを買う時まで気づいていなかったのだけど、この日は映画の日だった。鑑賞したのは、「オリバー・ツイスト」。原作はチャールズ・ディケンズチャールズ・ディケンズで、文芸名作モノの映画化作品である。


 
 (写真は、Amazon.co.jp http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4042110169/ より引用)。


チャールズ・ディケンズというと、「クリスマス・キャロル」は、幼少のみぎり児童向けの抄訳版で読んだり、アニメーションや映画作品を観たことがある。だけど、「オリバー・ツイスト」については全く触れたことがなかった。映画を観て、初めてその物語世界を知った。

でも、基本的にこういう映画は好きなのである。どういうところにひかれるかといえば、当時の時代の風景をリアルに再現していることだ。歴史的な光景をいま目前にできるというのは映画ならではの愉しみである。もちろん、時代の再現には相当お金がかかるわけで、これは大作映画にしかない醍醐味である。

ということで電車が停まった結果、この晩はロンドンの貧民窟を舞台にしたストーリーを僕は堪能し、オリバー少年の運命に涙し、その純粋な精神には感動したのだった。しかし、オリバーを囲む人物たちが、悪漢も善人もなんとも人間味に溢れていたなあ。原作がもともとそうなのだろうけど、物語になんともいえない深みを醸していた。


19世紀のロンドンから21世紀の川崎に復帰すると11時半頃。JRの駅に向かうとまだ電車は動いていない。おお、なんということだ。

駅は騒然としていた。横浜より先、いわゆる湘南のあたりの住民となると、東海道線しか路線がなく、それが停まるとみな往生してしまう。そうした乗客たちが往生している。

僕も以前鎌倉市内の寮に住んでいた頃は、災害時に電車の運行状況にはかなり過敏だった。長距離通勤になればなるほど、その距離に応じ線路上にトラブルが発生する可能性は高くなる。
いまでも忘れられないのは8、9年前に大雪が降った夜のこと。7時に会社を出て満員の東海道線の車両に押し込まれたのに、架線に雪が積もって電車は駅間で動かなくなってしまい、結果寮に辿り着いたのは午前3時くらいだった。あの時は本当にひどい目に遭った。当然、翌朝は定刻通り出社しないといけないわけだし…。

ふだんから長距離で満員の電車を我慢して通っているのに、トラブルで停まって帰れなくなるというのはまさに災難以外のなにものでもない。自分の経験もあって、僕はこういう時の湘南方面の住人には大いに同情するのである。まあ、湘南みたいなええところに住んでいるってことでおあいこだよ、とあえて言い放つこともできるのだけど。

僕についていうと、いま住んでいるのは川崎のすぐ近くの駅が最寄りで、京浜急行の沿線でもあるので京急電車に乗り換えて帰宅した。京急もひどい混雑だった。


部屋に入ってから、新聞社のニュースサイトをチェックした。

2月1日午後8時36分発生した地震は、埼玉県や神奈川県の一部で震度4を記録した。JR東日本の横浜方面の在来線は線路の安全点検のため運転を見合わせ、4時間近くたった2日午前0時10分頃から再開した。23万7000万人に影響が及んだという。

 Sankei Web 社会 埼玉、神奈川で震度4 東海道線一時止まり24万人に影響(02/02 01:05)
 http://www.sankei.co.jp/news/060201/sha094.htm

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