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August 11, 2008

篤姫

きょうは毎週鑑賞している大河ドラマ「篤姫」の感想を、記してみることにしよう。


■宮﨑あおいの名に埋め込まれた予言Atsuhime_1


宮﨑あおいは、徳川家とNHKに縁がある。


目下放送中のNHK大河ドラマ「篤姫」で、徳川13代将軍家定の御台所、天璋院篤姫を演じているのはご存じのとおり。

天璋院は夫・家定の死後、幕末から明治維新に至る時代を生き、女性として徳川幕府の終焉に立ち会うことになった人物だ。徳川の女を演じる女優、宮﨑あおい。

その彼女が、同じNHKでおととし出演していたのが、連続テレビ小説「純情きらり」。時代は戦前・戦中であったが、主人公が生まれ成長する舞台として設定された土地は、愛知県岡崎市だった。

岡崎といえば、これすなわち徳川家康誕生の地。いや、宮﨑あおい演じる女学生・桜子が、岡崎城のすぐ下の河原を自転車で駆け抜けるシーンはさわやかでしたね。

徳川の始まりの土地を舞台にしたドラマに出て、そしてこんどは徳川の終わりに立ち会う女性を演じる。つくづく宮﨑あおいは、NHKと徳川に縁がある。

いや、これは縁ではない。必然なのだ。

これらの役を演じるのは、宮﨑あおいをおいて他には考えられないのだ。だって名前を見れば、わかる。みやざき、あおい。

「あおい」。そう、葵の御紋の“葵”である。それは言わずとしれた徳川の家紋だ。さらに岡崎では当地を現す雅称にもなっている。彼女が徳川ゆかりの役を演じる運命は、女優としてスタートした時から名前に刻まれていたのである。

「あおい」の名は、予言だったのである。

ミヤザキ・コード。


その大河ドラマ「篤姫」が好調なのだという。アエラの今週号にも「あおい「篤姫」が維新史を塗り替える」と題して記事が組まれ、評判の背景に迫っていた。

たしかに「篤姫」、わが家でも毎回欠かさず見ている。前年の「風林火山」は時折しか視聴せず、しかも年の途中で止めてしまったから、それとは対照的だ。


■女性を主役に据えたほうが、がぜん面白い


Atsuhime_2考えてみれば、大河ドラマは女性を主役にしたほうが、これまでにない歴史の見方を提示できて面白いのかも。


「女が男と手を携え、世を開いていくのは、これで終わるのやも知れぬ…」

おととし放映された大河ドラマ、「功名が辻」。その最終回のこのセリフにはっとさせられた。

これは、大阪の陣において豊臣家が滅んだ直後のシーンで、仲間由紀恵演ずる山内一豊妻(千代)と会した高台院(北政所)がつぶやいた一言だった。

中世の幕引きとなるその時代。それはまさに女性が歴史の表舞台から退場しつつある時でもあった。


武家の歴史は、その当初より女性とともにあった。

鎌倉幕府を源頼朝とともにスタートさせた北条政子。大河ドラマ「花の乱」の主人公となった室町時代の足利義政の妻、日野富子。そして豊臣秀吉の妻である北政所や淀君。徳川3代将軍家光の乳母の「春日局」(これも大河になりましたね)…。

しかし、その後女性が権力を担うことはなくなる。近世、近代は男性優位の社会であった。天璋院だって、江戸城無血開城に陰の尽力をしたとはいえ、権勢を振るったとは言い難い。

それこそ昭和時代の末期に至り、土井たか子が日本社会党の委員長になるまで政治の表舞台に立つ女性は、歴史のなかに存在しないのである。


土井たか子までのその後の400年を一言であらわしたセリフに、僕はおおっ、すごいこと言わせる大河だなあと、感心したのだった。


■新解釈満載の大河「篤姫」に驚嘆

Atsuhime_3
おととしの「功名が辻」に続き女性が主人公となった今回の大河ドラマ。この「篤姫」もまた、別の角度からの驚きが満載だ。


篤姫が主人公と決まり、聡明で好奇心旺盛な女性と役柄が設定された時から、僕が注目していたのは、がぜん夫となる将軍・徳川家定であった。

家定が、頭も体も弱く、かなりしょうもない人物であったのは周知の歴史的事実。将軍に謁見した米国公使ハリスの前で、ただただ頭を前後に揺すっていた人物である。

あおいちゃんみたいな美人に対して、旦那となる将軍はずばりアホ…。これをどう描くのか、興味津々だったのだ。輿入れした篤姫の、がっかりびっくり“やっぱり瑛太がよかったわぁ”と落胆するシーンがあるのだろうなあ、と期待していた。

ところが、そうでなかった。

大河ドラマ「篤姫」の家定はアホではなかった。うつけもののふりした、孤独で賢い人物として設定されていたのだ。

な、なんだそりゃー。そんなドラマ見たことないぞ。いや民放ドラマの「大奥」の家定もまともだったかもしれんが、史実を重んじる大河ドラマでそんな解釈が出てくるとは思わなんだ。

それだけでなかった。そんな信長も顔負けの設定をさらに上回る驚きが待っていたのだ。


紀州徳川家の慶福か、一橋家の慶喜かをめぐって争われた将軍継嗣問題で、一橋派である篤姫や幾島の暗躍もむなしく、家定は慶福を跡目に選んでしまう。そして、紀州派の筆頭、彦根藩主井伊直弼を大老に選ぶ。

これ自体は、紛うことなき史実ではあるのだが。

ドラマでは、その理由が篤姫にあると家定が説く。篤姫を妻にし、連日夜伽を交わし、その魅力にぞっこんになったこの男は妻の顔を見てつぶやく。

「わしは初めて徳川を残したいと思うたのじゃ。このわしの家族を…」。

むむ…僕の妻もこのシーンは、ちょっと感動しながら見ていた。

さらに言う。“直弼を大老に選べば、徳川家が末永く残る道をきっと探してくれるだろう”と。“わしは家族を残したいのじゃ”。

ほぇ!? ほぇほぇほえ。

おおおおーい、勅許なしでの開国は、安政の大獄は、桜田門外の変は、尊王攘夷思想の高まりは…この後の幕末の動乱の原因は、家定の家族思いの性格にあったというのか。篤姫への愛がそうさせたというのかっっ。

このシーンを見た時にはぶったまげた。素直に感動していた妻の横で、僕は「篤姫」は本当にすごいドラマだと感嘆した。そんな歴史解釈、男性を主人公に幕末維新を描いていたら、ぜったいに出てこやしない(そもそも男性ドラマでは篤姫が登場しないか、仮に出てきてもチョイ役である)。

歴史の陰に女あり。まさに教科書が教えない歴史というべきか。いや、当然こんなこと記録には全く残っていないけどね。

幕末の動乱は、篤姫への愛が全ての始まりだった。

て!? そんな新解釈のドラマ、見たことない。

前回の繰り返しになるが、やはり、大河は女性を主人公にしたほうが、面白くなるということであろう。


次回作はぜひ現代を舞台に、大河ドラマ「土井たか子」のぞむ。


 

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